第11話:シュガー・ワールド

パネットーネ「無能王?」
パネットーネ「うぅむ、心当たりのない名であるな。というか、その渾名ひどすぎない?」
ユウ「もっと他にも言いようがあっただろうに……。」
ジネット「それは……ボクも思った。」
ロッシェ「だけど、パネットーネでも知らないか……。黄の英傑といえば、僕達英傑の元になった人だから、もしかしたらと思ったんだけど。」
パネットーネ「そのことであるが……、小生の知る英傑は、最初から赤と緑だったのである。」
ロッシェ「えっ、そうなのか?」
パネットーネ「うむ、よければ説明するであるが。」
ロッシェ「そう言えば、その話は初耳だな……。つまり、聖雪祭の始まりの話ということだろう?」
メルク「みゅ~、興味有りなのですよ!」
パネットーネ「まぁ、そう期待されるような話でもないのであるが……。」
パネットーネ「これは小生が持つ最古の記録……つまり、最初の聖雪祭。最初にシュガー・ワールドに現れた英傑の話であるが……、」
パネットーネ「これに関してはよく覚えているのである。彼らは赤と緑の衣装に身を包んだ白髪の双子……。その手には聖剣が握られていたのであるよ。」
パネットーネ「彼らは神器を動かし、雪を降らせると、小生にこれからの手順を教えてくれたのである。即ち、聖雪祭の手順であるな。」
パネットーネ「まぁ、そこからは知っての通り。小生が5年ごとに赤と緑の英傑を探しに行き、その2人に雪を降らせてもらうようになった。」
パネットーネ「……これが、聖雪祭の始まりなのである。」
ユウ「たしかに、意外とあっさりしてる……。」
ジネット「それに黄の英傑も出てこなかったね。」
パネットーネ「うむ、故に小生首をひねるばかりで……。さすがに時折小耳には挟むのであるが、結局、その黄の英傑とはどのような人物なのである?」
ロッシェ「僕たちはパネテオロ女王様がそうだと教えられている。この国を存続させてくださった偉業を讃え、その瞳の色を取り、『黄の英傑』と呼ぶのだと。」
ジネット「だけど、昨夜のクラリエテスちゃんの話だと、女王様のお兄さんも候補に挙がってくるみたいだ。」
ユウ「でも、本人の話がほとんど伝わっていない上に、その……渾名が無能王、なんだよな?」
ロッシェ「疑問はわかるよ。そのままで受け取るなら、とても『英傑』と呼ばれるような人物ではない。」
ジネット「うーん、クラリエテスちゃんにからかわれたのかなぁ?でも彼女、嘘を言っているようにも見えなかったし……。」
パネットーネ「妙にサービス精神旺盛と言うか、義理堅いところがあるであるからな。まぁ、何かしらの意図はあるのであろうが……、」
ジネット、パネットーネ「うーん……。」
シュクレーレ「揃いも揃って難しい顔して……。どうしたんだい、みんな。」
カラメロ「いよいよ最後の出立なのに、それじゃあ聖剣も泣いちゃうよ~。」
ロッシェ「シュクレーレ、カラメロ。」
パネットーネ「おお、と言うことは……!」
カラメロ「うん、聖剣を届けにきたよ~。はい、これが今回の聖剣~。」
メルク「みゅわぁ……。刀身がキラキラと輝いているのですよ。それも、こんなにもいろんな色で!」
カラメロ「普通の武器じゃ滅多に起きない現象なんだよ~。一流のお菓子を、一流の鍛冶師が打つことで、初めてこの輝きを出すことができるんだ~。」
ユウ「すごい……、綺麗だ。」
ジネット、ロッシェ「……。」
パネットーネ「今年の聖剣も申し分ない仕上がり。感謝するであるぞ、カラメロ殿。」
カラメロ「あたしはせんせ~の作業を見てただけ~。でも5年後はあたしが打つよ~。がんばるよ~。」
パネットーネ「うむ、頼もしい限りであるな!」
パネットーネ「それでは……ジネット殿、ロッシェ殿。聖剣を受け取ってほしいのである。」
ジネット「わ、わかった。」
ロッシェ「ふぅ……。よし。」
カラメロ「それじゃあ、託すね~。あたしたちみんなの気持ち。」
ジネット、ロッシェ「……。」
ロッシェ「……重いな。」
ジネット「うん。ずっしりしてる。」
シュクレーレ「カラメロの言葉通りだよ。その剣には、ボクたちの思いが込められている。軽いわけがないさ。」
シュクレーレ「だから頼むよ、英傑様。ボクたちに……この国に、再び雪を降らせてほしい。」
ロッシェ「ああ、必ず。」
ジネット「信じて、待っていて。」
カラメロ、シュクレーレ「……。」
ザバヤン「ぶるる。」
パネットーネ「うむ、これですべての準備は整ったであるな。ならば、いよいよ大詰めなのである。」
パネットーネ「帰るであるよ、ザバヤン。我らが故郷、シュガー・ワールドへ。」

ユウ「ここが……シュガー・ワールド。」
メルク「真っ白なのです……。」
ジネット「わぁ……。」
ロッシェ「お菓子の国は、ここから……。」
パネットーネ「ハッハッハ、何年経とうが、リアクションというのは変わらないものであるなぁ。お気に召したであるかな?」
ロッシェ「ああ。父上がここに来られる権利があるだけで、英傑になった甲斐があるって言ってたけど……。ようやくその言葉の真意を理解できた気がするよ。」
ロッシェ「聖域として立ち入りを禁止するのも納得だ。ここは気軽に踏み込んでいい場所じゃない。」
ユウ「あの、本当に良かったんですか?俺たちみたいな部外者がそんな場所に……。」
メルク「な、なのです。私たちは英傑でもなんでもないのですよ。」
パネットーネ「無論、問題なしなのであるよ!ここまで貴殿らが小生たちにしてくれたことは、充分に足を踏み入れる権利を許されるものなのである。」
パネットーネ「胸をはられよ。今回もまた雪を降らすことができるのは、貴殿らの助けがあったからこそなのである。」
メルク「パネットーネさん……。」
ユウ「……ありがとうございます。」
パネットーネ「まぁ、そもそも立ち入り禁止などにせず、自由に出入りしてくれても構わないのであるがなー。」
ジネット「そういうわけにはいかないよ。……この場所を再び、異形の土地にするわけにはいかないしね。」
ロッシェ「……ああ。」
ユウ「異形の地……!」
メルク「それは、お菓子を採りすぎたせいで発生するという……?」
ロッシェ「そう。変質した土地のことだ。この土地のお菓子は生き物に牙をむくようになり、他から干渉されることを徹底的に拒む。」
ロッシェ「シュガー・ワールドは、その異形の土地が最初に発生した場所だとされているんだ。」
ジネット「きっと当時はまだ、正しいお菓子の採取方法が確立されていなかったんだろうね。ボクたちにとってこのワールドは、戒めの象徴なんだ。」
ユウ「そうだったのか……。」
ユウ「でも、今は全然そんな感じはしないな……。」
メルク「そうなのですよ。前に見た異形の土地とは、まるで違うのです。むしろ、そういう意味では至って普通のような……?」
ジネット「うん、今はすっかり元通りさ。何が起こったのかは不明だけど、シュガー・ワールドは元の土地に戻ることができたんだ。」
ジネット「だからシュガー・ワールドは戒めの象徴であると同時に、再生の象徴でもある。今は……ほら、あそこを見て。」
メルク「みゅ?」
ザバーチェ「ぶおー。」
ザバーチェ「ぶほほ~ん。」
ユウ「あ、ザバヤンがいっぱいいる!」
パネットーネ「ザバヤンはこいつの名前であるよ。種族としての名はザバーチェなのである。」
ジネット「ザバーチェは闘争心に欠けるし、お世辞にも強いと言えるモンスターじゃない。……ごめんね、ザバヤン。」
パネットーネ「彼らは、そういうのを気にするよなモンスターでないであるよ。な、ザバヤン?」
ザバヤン「ぶほほほほ。」
ジネット「ありがと。ザバーチェのそういうところが好きだよ。」
ジネット「ええっとね、つまりこういうこと。ザバーチェは争いを嫌うし、それがある場所にも身を置きたがらない。」
ジネット「だから、彼らが腰を落ち着ける場所は、決まって安定した平和がある場所なんだ。」
ユウ「それじゃあ、これだけのザバーチェがいるこの土地は……、」
メルク「とっても平和ということなのです!」
ジネット「うん!シュガー・ワールドが、ちゃんと元に戻ったっていう証明さ。」
メルク「みゅ~、すごいのですよ、ザバヤン!立派なことなのです!」
ザバヤン「ぶーほっほっほ!」
パネットーネ「いや、こいつは特に何もしてないであるから。ゴロゴロできる土地を探して行きついただけであるから。」
ザバヤン「ぶほぉう!」
パネットーネ「いってぇ!き、貴様ー!争いを好まないとか大嘘ではないかー!くらえ、反撃のクロスチョーップ!」
ザバヤン「ぶっほぉーう!」
ジネット「ああ、説得力が皆無になる喧嘩はやめて~……。」
ユウ「でも、肝心なところ……。元に戻った理由はわかってないんだよな。」
ロッシェ「ああ。自然回復や第三者の介入、様々な説が挙げられているけど、どれも決め手に欠ける。」
ロッシェ「ちなみにだけど、パネットーネ。……何か知ってるかい?」
パネットーネ「……さぁ。」
ロッシェ「だよな……。」
パネットーネ「だ、だって小生が目覚めた時には既にこうであったしー!それより前のこととか知らんしー!」
ロッシェ「い、いや、失望したわけじゃないんだ。単純に君なら可能性があるかと思っただけで。」
ロッシェ「考えてみれば、この国の建国も900年ほど前のこと。300年生きても、半分くらいを知らないのは全然不思議な事じゃないしね。」
パネットーネ「で、ある!それにその300年間も、英傑の装備を手入れしているか、日がな一日、ゴロゴロしているかなので……、」
パネットーネ「ぶっちゃけ、300年分の知識があると思われると、アイス汗がだらだらものであるよ!汗でないけど!」
ジネット「ほ、本当にここからは出ないんだね。誰に強制されてるってわけでもなさそうだけど……。」
パネットーネ「まあ、気持ちの問題であるな。小生を繋ぎとめる何かを果たさない限り、ここを離れるつもりはないのであるよ。」
ユウ「じゃあ、今回も雪を降らせたらパネットーネさんともお別れ……ですか。」
ジネット、メルク、ロッシェ「……。」
パネットーネ「な、何を暗くなっているであるか!今生の別れでなし!5年経てばまた会えるのである!」
パネットーネ「それに、みなの生きる世界は、小生がいなくなったぐらいで何も変わらないのである。なーに、心配されるな!」
ジネット「……たしかに、世界は何も変わらないかもしれない。」
ジネット「でも、トネさんがいてくれたほうがずっと賑やかだ。」
パネットーネ「……。」
ロッシェ「卑下が過ぎると怒るぞ、パネットーネ。君が僕たちに与えた影響を、そう簡単に拭えると思うな。」
パネットーネ「……いやぁ、これは。」
パネットーネ「面目ない。そして感謝なのである。小生のような者に、そこまで心を砕いてくれて。」
パネットーネ「だが、使命を果たすまでここを離れないのは小生に残った僅かな信念。曲げることはできないのである。」
ユウ「絶対に、成し遂げたいことなんですね。」
パネットーネ「うむ、こればかりは。」
パネットーネ「故にお詫びするのである。皆々様の心を痛めてしまうこと、期待に応えられぬことを。申し訳ない。」
ジネット、ユウ、ロッシェ「……。」
ロッシェ「……5年後の聖雪祭では、必ず顔を見せるんだ。約束だぞ、パネットーネ。」
パネットーネ「うむ、約束するのである!どのようなルートを辿ろうと、このパネットーネ、必ずや参上するのであるよ!」
ロッシェ「……そこが妥協点だな。」
ジネット「うん、だね。」
ユウ「俺たちも、またこっちにこないとな、」
メルク「みゅふふ、5年後の予定がもう出来てしまったのです!」
パネットーネ「……感謝するのである。」
パネットーネ「うぅむ、しかしいかんであるな、せっかくの大詰めであるのにこのような湿っぽい感じ!クッキーもしけってしまえば旨くはない!」
パネットーネ「さぁさぁ、元気を出して進むのである!我らが求める雪は、あの城の中であるぞ!」
ロッシェ「そうか、あの中に神器が……。」
ジネット「いよいよ、だね。」
パネットーネ「さぁ、それでは出発進行なのであるよ!民が!国が!雪を求めているのである!」
ジネット、メルク、パネットーネ「おー!」
ザバヤン「ぶるる……。」
メルク「みゅ?どうしてしまったのです?」
ユウ「震えてる……。何か、怖がっているみたいだけど。」
パネットーネ「おお、すまなんだ。ザバヤンはここまでであったな。」
パネットーネ「旅への同行、助かったのである。ゆっくり休んでくれ。」
ザバヤン「ぶほー……。」
ロッシェ「パネットーネ、これは……?」
パネットーネ「ザバヤンだけではない。ここにいるザバーチェは、決して城の中には入ろうとしないのであるよ。」
パネットーネ「きっと、中にいる『奴』を恐れているのであろう。危険はないのであるがなあ……。」
ロッシェ「奴?」
パネットーネ「見てもらったほうが早いであろう。皆々様、行くのである。」

パネットーネ「到着なのである。」
パネットーネ「ここがこの城の最上部。そして、神器を安置する展望台なのである。」
ジネット「それじゃあ、あの中央にあるのが……。」
パネットーネ「うむ、神より賜いし神器である。あれに聖剣を刺すことで、いよいよ雪が降るのであるよ。」
ジネット、ロッシェ「……。」
メルク「でも、ザバヤンは何に怯えていたのです?特に怖がりそうなものはなさそうに見えるのですよ。」
パネットーネ「それは……あれなのである。」
メルク「あれ?」
アラーモウド「……。」
アラーモウド「……!」
メルク「みゅわ!?」
ユウ「ど、銅像が動いた!?」
パネットーネ「銅像ではないのである。奴もまた、れっきとしたモンスターなのであるよ。」
ロッシェ「あれが……モンスター?」
パネットーネ「奴もまた小生と同じく、300年……、いや、それ以前より生きているモンスターのようである。」
ジネット「300年以上!?あ、ありえるの、そんなこと……?」
ユウ「……前に砂漠の国で、似たようなモンスターを見たことがある。それに近しい種類なのかもしれない。」
ジネット「そ、そんなモンスターが……。」
ロッシェ「襲ってくる気配は……なさそうだな。」
パネットーネ「うむ、人が入ってくれば反応はするが、あそこから動くことは300年間なかったのである。」
ロッシェ「神器を守っているというわけでもないのか……?」
パネットーネ「むしろ、見守っている……といった印象を受けるのであるよ。」
ロッシェ「見守っている……。」
パネットーネ「どうするであるか?危険はないと思うであるが、1度態勢を立て直すという手もあるのである。」
ロッシェ「いや、このままいこう。構わないね、ジネットさん。」
ジネット「うん、ボクも賛成。戻ったところで、何か変わるわけでもなさそうだしね。」
パネットーネ「承知したのである。では、お2人で聖剣を構えて神器へ。」
パネットーネ「小生とユウ殿、メルク殿はその後に続くのである。」
ジネット「わかった。」
ロッシェ「それじゃあ、えっと……、ど、どう持てばいいのかな?」
ジネット「うーん、持ち手は短いしね……。」
ジネット「あっ、そうだ!ボクのほうが手が大きいし、ロッシェくんの上から持つよ。ほら、こうやって!」
ロッシェ「……!」
ジネット「あれ、どうかした?」
ロッシェ「……ナンデモナイ。」
メルク「ついに男の子まで翻弄し始めたのです……。」
ユウ「上が男兄弟ばっかりだから、ああいうのに全然抵抗ないんだろうな……。」
パネットーネ「ひゅーっ!」
ロッシェ「やめろ!」
ロッシェ「はぁ……、ふぅ……。ジネットさんは相棒、ジネットさんは相棒……。」
ジネット「ロ、ロッシェくん?」
ロッシェ「……うん、問題ない。行こうか、ジネットさん。」
ジネット「うん……!」
パネットーネ「では、我々も続くのである。」
ユウ「了解です。」
メルク「なのですよ!」
アラーモウド「……。」
ジネット「……いよいよだね。」
ロッシェ「ああ、ようやくだ。」
アラーモウド「……。」
パネットーネ「これで今回も、無事に雪が降らせそうであるな。」
アラーモウド「……。」
ユウ「……ちょっとワクワクしてきた。」
メルク「みゅふふ、わかるのです!」
アラーモウド「……!」
アラーモウド「ズ、ズズ……。」
パネットーネ「む?」
ユウ「今、動いたような……?」
アラーモウド「ズズ……、ズズズズ!」
ジネット、ロッシェ「……!」
ジネット、ロッシェ「逃げろ!」
アラーモウド「ラ・アァアアアア!」
ユウ「う、うわぁああああ!?」
アラーモウド「ラ・アァアアアア!」
アラーモウド「……!」
ロッシェ「くっ、うぅ……!」
ジネット「お、重い……!」
ユウ「ロッシェ!ジネット!」
ロッシェ「逃げるんだ!2人がかりでも長くはもたない!」
ジネット「急いで攻撃が届かないところに!早く!」
ユウ「あ、ああ!ありがとう!」
メルク「た、助かったのです!」
アラーモウド「ラ・アァァ……。」
パネットーネ「お2人共……。」
ジネット「ボクたちなら心配いらないよ。知ってるでしょ、トネさん……!」
ロッシェ「君が選んだ英傑のことを、信用してくれたっていいんじゃないかな……!」
アラーモウド「ラ・アァアアアア!」
ジネット、ロッシェ「早く行って!」
パネットーネ「……すまんのである!」
パネットーネ「ユウ殿、メルク殿!今のうちに城の外へ!何にしても1度態勢を立て直そう!」
ユウ「わかりました!」
メルク「パネットーネさんも、早くなのです!」
パネットーネ「うむ!……ん!?」
ジネット、ロッシェ「うぐぐ……!」
パネットーネ(お2人が聖剣を持っていない!?我らを助けるために、手放さざるを得なかったか!)
パネットーネ(では、どこに……)
パネットーネ(……あった!神器のすぐそば!あれを置いていくわけにはいかん!)
「ぬぅん……!」
ユウ「パネットーネさん!?」
パネットーネ「小生のことは気にせずに!あれを置いていくわけにはいかないのであるよ!」
ロッシェ「そうか、聖剣を……!」
ジネット「ロッシェくん、危ない!」
「うわっ!?」
アラーモウド「ララ・アァアアアア!」
ロッシェ「……っ!ごめん!」
ジネット「へーきへーき!でも集中して。片手間で対応できる相手じゃないよ!」
アラーモウド「ラ・アァアアアア!」
ロッシェ「くっ!任せたぞ、パネットーネ!」
パネットーネ「うむ、任されたのであーる!」
パネットーネ(あれはこの国の生きる者、生きてきた者たちが、300年にもわたり繋いできた希望の結晶!断じて!ここで失うわけにはいかんのだ……!)
パネットーネ「よし、届く!」
ユウ「やっ……!」
「今それに触れてはダメ!」
パネットーネ「取ったぁ!」
パネットーネ「……!?」

「許せよ、パネットーネ。我が愛しき息子よ。ワシはお前を愛している。だが……、」
「その剣に相応しいのは、お前ではない。」

パネットーネ「なに……がっ!?」
「パネットーネさん!」
「トネさん!」
「パネットーネ!」
「パネットーネ様!」
パネットーネ「み、な……?」
パネットーネ「……!」

パネットーネ「……む?」
パネットーネ「むむむ?」
パネットーネ「ここは、どこであるかな?」
パネットーネ「小生はたしか、城の中でモンスターに襲われていたはずである。それで、逃げる前に聖剣を回収しようとして……、」
パネットーネ「はっ!そ、そうである!聖剣!聖剣はどこに行ってしまったのであるかぁー!?というかここも、明らかに城の中じゃないっぽぉい!」
パネットーネ「だ、誰かー!助けてほしいのであるよぉー!うぉーん!うぉんうぉん!うぉーん!」
「……ットーネ。」
パネットーネ「うぉ……?」
「パネットーネ。」
パネットーネ「誰かが、小生の名前を呼んでいる?」
「聞いているのですか、パネットーネ様。」
パネットーネ「……この声、どこかで聞いたことがあるような?」
「聞いているなら返事を、パネットーネ様!」
パネットーネ「は、はいー!パネットーネはここにいるのであーる!」
パネットーネ「ぬぉ!?」

パネットーネ「こ、ここは……戻ってこれたのであるか?」
パネットーネ「……いや、何かが違うのである。見た目ではなく、もっと根本的な何かが……、」
「しっかりしてください、パネットーネ様!今は国の一大事だと、貴方もわかっているでしょう!」
パネットーネ「うおひぃ!?す、すまんであーる!」
パネットーネ「……って、あれ?」
ジネット?「やっと反応してくれましたか。まったく、相変わらず集中力がありませんね。」
パネットーネ「……ジネット殿?」

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