第1話:輝石祭の日に

村の子供「ねえ、お母さん。今日はどうしてみんなでお出かけするの?」
村人「大事なお祭りがあるからよ。ほら、ちゃんとおじいちゃんの輝石は持った?」
村の子供「うん。けど、どうしてこれを持ってかなきゃならないの?ずっと持っていちゃダメなの?」
村人「それは教会で神仕(しんし)さまのお話をちゃんと聞いていればわかるわ。ちゃーんとね。」
村人「それより、人が多いからはぐれないように手をつないでてよ?はぐれた子は、丘の上の城にすむこわーい悪魔に食べられちゃうんだからね。」
村の子供「またそれ~?」
?(コゼット)「……。」
?(ジャントール)「コゼット?」
コゼット「あ、パパ……。」
?(ジャントール)「こんな人ごみでぼーっとするな、はぐれたらどうする。」
コゼット「……、」
?(ジャントール)「……?」
コゼット「……その……、……ごめんなさい。」
?(ジャントール)「……。」
?(ジャントール)「次からは気をつけなさい。」
コゼット「はい、パパ。」
?(ジャントール)「コゼット、今日は教会で大事な仕事がある。パパが仕事をしている間、大人しく待っていられるな?」
コゼット「……うん。」
?(ジャントール)「……大丈夫だ。今日はルチアーノのやつも教会にいる。手が空いたときにでもかまってもらえばいい。」
コゼット「……。」
?(ジャントール)「……、」
?(ジャントール)「その、……何か質問は?」
コゼット「……ない。」
?(ジャントール)「……そうか。」
?(ジャントール)「もうじき教会つく。そうしたら……、」
?(ルチアーノ)「よう、ジャントール!それに、コゼットも!」
ジャントール「ルチアーノ……、相変わらずうるさいやつだな。」
コゼット「こんにちは、ルチアーノおじさん。」
ルチアーノ「お、おじさ……、」
コゼット「……パパがおじさんでいいって。」
ルチアーノ「ジャントール……、お前というやつは……。」
ジャントール「いつまでも女を口説いて回るな。シスターにまで声をかけていると聞いたぞ。いいかげん、年を考えろ。」
ルチアーノ「だからって、おじさん呼ばわりされたくないさ!見ろ、俺はまだ若い。自分が老けて見えるからって、ひがむなよな~。」
ルチアーノ「だいたい、俺は女好きという訳じゃなくてだな。ただ運命の相手を探して……、」
コゼット「……おじさんは、ダメだった?」
ルチアーノ「……ま、まあ、コゼットちゃんならありかな……。」
ルチアーノ「あっ、そうだ。祭りの間、コゼットはいつもの部屋にいるんだろ?」
コゼット「……うん。」
ルチアーノ「ハリエットの最新作の絵本、仕入れておいたぜ!」
コゼット「ほんと……!?」
ルチアーノ「おう!」
コゼット「で、でも……、どうしてわかったの……?
ルチアーノ「ふふん!俺には女心なんて、手に取るようにわかるのさ。」
ジャントール「……。」
ルチアーノ「じょ、冗談だよ。こないだ出かけたときに、熱心にあの絵本を見てただろ?」
ルチアーノ「それにコゼットちゃんは絵本が好きだし、なんてことない推理だぜ。名探偵ルチアーノお兄さんと呼んでくれても……、」
コゼット「ルチアーノおじさん、すごいね……!」
ルチアーノ「……!」
ルチアーノ「ま、まあいいけどね。おじさんでも。」
ジャントール「……。」
ルチアーノ「ああ、引き止めて悪かったな。」
ジャントール「いや……、」
ルチアーノ「俺たちもそろそろ教会に行かないとな。まったく、予定の時間はもっと後だっていうのに、みんな気が早いな。」
ジャントール「それだけ大事に思っているということだろう。」
ルチアーノ「……、ジャントール、お前は参加しないのか?」
ジャントール「参加ならするさ、神仕としてな。」
ルチアーノ「そういうことじゃ……!」
ジャントール「……。」
ルチアーノ「ああ、いや、悪い。別に責めているわけじゃない。」
ルチアーノ「わかるよ、エレオノールが、その……、いなくなって、お前がどれだけ悲しんだかって。」
ルチアーノ「けど、もう8年だ。いつまでもお前が輝石を持ってちゃ、彼女は安らげない。この世界にいつまでもとどまり続けることになる。」
ルチアーノ「だからこそ、彼女を思うなら……、」
ジャントール「……ルチアーノ。」
ルチアーノ「……。」
ジャントール「……悪いが、このことには口を出さないでくれないか。」
ジャントール「お前にはきっとわからない。お前は……、私とあまりにも違いすぎるから。私には、彼女しかいないんだ……。」
ルチアーノ「……。」
ジャントール「……だが、お前がいなかったらコゼットと私はどうなっていたかわからない。とくにコゼットは……、」
ジャントール「その……、お前に懐いているし……。私には過ぎた友人だと思っている。……すまない。」
ルチアーノ「……、」
ルチアーノ「いや、いいさ。」
ルチアーノ「けど、いつまでもこのままなんて、そんなのはただの逃げでしかないぜ。」
ジャントール「……。」
ジャントール「……そうだな。」
コゼット「……、パパたち何を話しているのかな……。」
コゼット「……スクウィークもお話できたらいいのにね。」
コゼット「スクウィークはママが作ったんだって、パパが言ってた。……もし、スクウィークがお話できたら、いろいろ教えてくれたのかな……。」
「……。」
コゼット「……?」
コゼット「……わたしを呼んでるの?」
「……。」
コゼット「待って……!」
ルチアーノ「じゃあ、とりあえず祭りの段取りはこれでいいとして……、」
ルチアーノ「ん?」
ジャントール「どうかしたか?」
ルチアーノ「コゼットは?」
ジャントール「……!」
村の子供「ねえ、お母さん。さっき女の子が呪われた城に歩いて行ったよ。」
村人「何言ってるの、そんなわけないでしょ。あんなところに好んでいく子がいるもんですか。」
村人「ほんとだもん!ねずみのお人形抱えた女の子がいたんだもん!」
村人「もう、この子ったら、また歩きながら夢でも見てたんじゃないの?」
村人「あら、神仕さま!今日はよろしくお願いしますね。」
ルチアーノ「え、ええ……。」
村人「ほら、行くわよ。」
村の子供「ほんとにいたんだってば~っ!」
ルチアーノ、ジャントール「……。」
ルチアーノ「ジャ、ジャントール……、変な気を起こすなよ。あそこは呪われてるって噂だぞ。」
ルチアーノ「変な幻覚を見るって言うし……!前の神仕は、あの城から逃げかえってきてから、昼も夜も祈ってる。」
ルチアーノ「別に行くなって言ってんじゃない。俺だってコゼットちゃんは心配だ。だが、行くにしたってしかるべき準備がだな……、」
ジャントール「……輝石祭はお前に任せる。」
ルチアーノ「ちょっ、おい!ジャントール!」
ルチアーノ「……ったく、もう!」

「……。」
コゼット「あなたは、だれなの……?もしかして、あなたは……、」
「……。」
コゼット「どうして何も答えてくれないの……?」
「……。」
コゼット「あっ、行かないで……!お願い、待っ……!」

コゼット「……え?」
「おやおや、これは珍しい。」
コゼット「だれ……!?」
?(シトルイユ)「ようこそ、お嬢さん。この夢と幻の世界……、」
?(シトルイユ)「アローウィンの町へ!」

タイトルとURLをコピーしました