第10話:夢添いの君

レオファントム「グルルルル……!」
ユウ「本気で、戦ってない……?それに、癒されたあとのモンスターだ……。」
レオファントム「グルルルル!」
メルク「……なんだか、私たちをここから追い払いたいだけみたいに見えるのです。」
ユウ「どうして……、」
レオファントム「グルルルル!」
ユウ「うわっ!」
メルク「ユウさん!」
ユウ「大丈夫だ、壁にぶつかっただけだから……、ん?」
メルク「掛け布がずれて……、」
ユウ「これは……、絵、か?」
メルク「ユウさん、この絵……!それに、日付が……、」
ユウ「……まさか、これは……、」
メルク「そんなことって、あるのですよ……!?」
ユウ「……。」
ユウ「……、なにか、本が落ちてる。……日記……?」
メルク「そういえば、さっきのオバケたちがいないのですよ……!それにその本、あのオバケそっくりなのですよ!」
ユウ「あのオバケ……、日記だったのか……。それに、あのカボチャも……。」
レオファントム「……ぐるるるる……。」
ユウ「そうか……。」
ユウ「全部、お前の力だったんだな……。」

コゼット「……ここは……、」
コゼット「……!」
コゼット「……スクウィーク……。……ありがとう。わたし、ちゃんと戻ってこれたよ……、」
ジャントール、シトルイユ「……、コゼット……、」
シトルイユ「……君は……、」
コゼット「パパ……?」
コゼット「パパぁ……っ!」
ジャントール「……!」
コゼット「ごめんなさい……!わたし、勝手に……、」
ジャントール「……、」
ジャントール「いや、私のほうこそ、悪かった。ちゃんとはぐれないように、お前と手をつないでおくべきだった。」
ジャントール「……おかえり。帰ってきてくれてありがとう、私たちの、コゼット。」
コゼット「パパ……、た、ただいまぁ……っ!」
シトルイユ「……。」
シトルイユ「……君は、もう見つけてしまったんだね。」
コゼット「ミスター……。」
コゼット「……、うん。わたし、もうわかったよ。わたしが誰で、何を求めていたのか。」
コゼット「だから……、ミスターとは行けない。」
シトルイユ「そうか。」
シトルイユ「……そうか。私は、またひとりになってしまうのか……。」
コゼット「ミスター……、」
「そんなことない!」
シトルイユ「……!」
レオファントム「……ぐるるる……。」
ユウ「……案内してくれて、ありがとう。」
レオファントム「ぐるる……、」
シトルイユ「君たちは……、」
ユウ「あなたに届け物を。」
シトルイユ「届け物……?そんな馬鹿な。私にそんな相手は……、」
ユウ「あなたは忘れてるだけだ。長い間、ひとりで待ち続けたせいで。……だからこれを、渡しに来たんだ。」
シトルイユ「それは……、……輝石。」
ユウ「受け取ってください。これは……、あなたのものだから。」
シトルイユ「……。」
シトルイユ「モグッ!」
ユウ「えっ、食べるの!?」
「……、……。」
シトルイユ「……かぼちゃ頭に響く、音がする。」

シトルイユ「……。」
「ねえ、シトルイユ。」
シトルイユ「なんだい?」
「今度、マナーの授業でエスコートの試験があるんだ。君、練習相手になってよ。」
シトルイユ「練習相手?ああ、もちろん。マスターの願うままに。」
「……。」

シトルイユ「……。」
「ねえ、シトルイユ。」
シトルイユ「なんだい?」
「いつか、一緒に世界中を旅しようよ。屋敷に飾ってある絵の景色を実際に見に行くんだ。」
シトルイユ「それは素敵だね!」
「今は勉強ばっかりで、外に出る暇もないけど……、きっと君となら楽しい旅ができるから。……約束だよ!」

シトルイユ「……。」
「ねえ、シトルイユ。」
シトルイユ「なんだい?」
「……僕と友達になってくれてありがとう。」
シトルイユ「……君の望みだからね。」
「……僕が君の契約者だから?」
シトルイユ「……。」
「……君は優しいね。」

シトルイユ「……。」
「ねえ、シトルイユ……、」
シトルイユ「……なんだい?」
「……ごめんね、僕、君と約束したのに、果たせそうにないや。」
シトルイユ「……大丈夫さ。君が歩けなくたって私が抱きかかえて連れて行ってあげよう。エスコートもあんなに練習したんだ。」
「ふふふ、僕は女の子じゃないよ。」
シトルイユ「……それじゃあ、友達として、君を運んであげよう。ごらんのとおり、僕は君より体が大きいし、君を抱えるなんて簡単さ。」
「ありがとう。君は優しいね。」
「……シトルイユ。そろそろ僕は君の契約者じゃなくなるよ……。」
シトルイユ「……。」
「だからあの約束は、……忘れてくれてもいいんだよ。」
シトルイユ「……忘れないさ。それに、君はきっとすぐによくなる。」
シトルイユ「そうしたら2人で旅に出よう。世界中を回って、いろんなものをみて……、」
「うん……、そうだね。いつか……、そんな、夢みたいな日が来たら……、」
シトルイユ「……君と約束を果たせる日を待っているよ。」
「……。」
シトルイユ「いつまでも。いつまでも。君の、ただひとりの友達として。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
シトルイユ「……君は、私のただひとりの友達だ……。」
「……。」

シトルイユ「……。」
シトルイユ「ありがとう。」
ユウ「……。」
シトルイユ「これで私は、約束が果たせるよ。」
ユウ「……。」
シトルイユ「ハッハッハッハッハ!さあ、行こう!」
シトルイユ「世界中を旅するんだ!この城を出て、世界中を巡って、あの絵の景色を2人で……、」
レオファントム「……。」
シトルイユ「……いや、3人で!」
レオファントム「……!」
シトルイユ「君もひとりなんだろう?君はずっと私に夢を見せてくれていた!」
シトルイユ「だが、今度は君に、私が夢を見せてあげよう!彼と見た夢を、君にも見せてあげたい。君の見せてくれた夢は、私を救ってくれたから。」
シトルイユ「さあ、君もいっしょに旅に出ようじゃないか!君と私と、そして彼の3人で!」
シトルイユ「ハッハッハ!みんな人じゃないのに、3人だなんて愉快だね!ハッハッハッハッハ!」
レオファントム「ぐるるるるっ!」
シトルイユ「それじゃあ、別れの時だ!ありがとう!そしてさようなら!」
シトルイユ「……さようなら、コゼット。」
コゼット「……!」
コゼット「ありがとう、さようなら、ミスター。」
シトルイユ「……ひとつだけ、贈り物だ。」
コゼット「……ランタン?」
シトルイユ「もし君が、もう1度夢を見たいと思ったら、そのランタンが導いてくれる。」
ジャントール「……。」
シトルイユ「その必要は、ないかもしれないがね。」
コゼット「……。」
シトルイユ「コゼット……、君と新しい夢を見たいと思ったのは、決して嘘じゃないよ。」
コゼット「……うん。わたしもだよ、ミスター。……元気でね。」
シトルイユ「君もね。」
シトルイユ「さあ、行こうか!いつか夢を見果てる時まで!」
レオファントム「ぐるるるるるる!」
「」
コゼット「……行っちゃった……。」
「ほ、ほひゃああああああ!?」
ジャントール「……!」
コゼット「あの声……、」
「ジャ、ジャジャジャ、ジャントオオオル!」
ジャントール「……、呼ばれて飛び出そうな言い方をするな……。」
ルチアーノ「い、今、大きなモンスターとかぼちゃが空を飛んで……!」
ジャントール「……お前、その恰好は何だ。」
コゼット「……、おじさん、ちょっとダサい……。」
ルチアーノ「ひどい!?お、俺はだなあ!お前たちを助けるためにこうして装備を見繕って……、」
コゼット「……なんで鍋とお玉なの……?」
ルチアーノ「……慌てすぎて間違えたんだ。」
コゼット「……おじさん、ちょっとダサい……。」
ルチアーノ「ひどい!」
コゼット「ふふふ、嘘だよ。……ありがとう、ルチアーノお兄さん。」
ルチアーノ「コゼットちゃん……!」
ルチアーノ「……やっぱり気を遣われてる気持ちになるから、おじさんでいいよ。」
ジャントール「……、ルチアーノ。」
ルチアーノ「……?}
ジャントール「輝石祭は?}
ルチアーノ「だいたいは終わったぜ。もう輝石も流した。外に出たら見えるんじゃないか?」
ジャントール「……そうか。」
ルチアーノ「途中から急いできたんだからな~?感謝しろよ……、」
ルチアーノ「って、あっ!流し包(ながしづつみ)おいてくるの忘れてたな……。こんなところまで持ってきちまった。」
ジャントール「……、」
ジャントール「……それなら、ひとつ、もらってもいいか?」
ルチアーノ「……。……いいのか?」
ジャントール「……ああ。この城の塔からなら流せるだろう。」
ルチアーノ「……、」
ルチアーノ「そうか。」
コゼット「……?」
ジャントール「……そういえば、さっきの少年たちは……、」
ルチアーノ「少年?見当たらないけど、さっきまでいたのか?」
ジャントール「……、」
ジャントール「いや……、なんでもない。」
ルチアーノ「ちょっ、気になる言い方するなよ!?ま、まさか幽霊とかじゃないよな……!?」
ジャントール「わからん。だが何かあっても、鍋とお玉でどうにかできるだろう。」
ルチアーノ「どうやって!?」

ジャントール「……。」
ルチアーノ「……どういう風の吹き回しだ?あんなに嫌がってただろう。……無理して手放したんなら……、」
ジャントール「そういうわけじゃない。ただ……、もう、1度やったことだからな……、夢の中で。」
ルチアーノ「……はあ?」
ジャントール「お前は知らないだろうが、私は意外と夢見がちなんだ。」
ジャントール「……、おかしいと思うか?」
ルチアーノ「いや、……別に?いいと思うぜ。意外なギャップってやつ?」
ルチアーノ「ハッ!俺がモテるのに必要なのはそれだあああっ!」
ジャントール「……。」
ルチアーノ「ふごっ!は、鼻をつまむな……!」
ジャントール「イラっとした。」
ルチアーノ「ふざけてすいません!」
ジャントール「真面目に話そうと思ってたのに……。」
ジャントール「……。ルチアーノ、私はお前にあや……、」
ルチアーノ「ストップ。……今更だぜ。何年の付き合いだと思ってんだよ。」
ジャントール「……、」
ジャントール「それも……、そうだな。」
ルチアーノ「だろ?}
コゼット「……、あ、あの……、」
ルチアーノ「……、ジャ……、」
ジャントール「どうした?}
ルチアーノ「……。」
コゼット「あ、その……、」
コゼット「……えっと、スクウィークがね。夢の中で、パパの相棒だって……、」
ジャントール「……そうか。」
コゼット「……、」
コゼット「……。」
ジャントール「そうか……。」
ジャントール「コゼットも、あいつと話せたんだな……。」
コゼット「……!パパも、スクウィークとお話したことあるの?」
ジャントール「あるさ。あいつとパパは、無敵の名コンビなんだ。火吹き竜を倒したこともある。」
コゼット「……!」
ジャントール「魔法の靴で空を飛んだり、伝説のレイピアを手に入れるためにゴーレムに勝負を挑んだり、星の海を泳いだりもした。」
コゼット「そうなの!?」
ジャントール「夢の中でな。」
コゼット「夢から覚めたら、スクウィークにはもう会えないの……?」
ジャントール「いいや。眠る前に、パパとスクウィークがどんな冒険をしたか、聴かせてあげよう。」
ジャントール「そうしたら、きっとその夜の夢で、スクウィークと会えるだろうから。」
コゼット「……、パパも一緒?」
ジャントール「……?」
コゼット「……、手をね、つないで寝たら、その人とおんなじ夢を見られるんだって。だから……、」
ジャントール「……そうだな。パパも一緒だ。一緒に、同じ夢を見よう。」
コゼット「……、」
コゼット「うん!」
ルチアーノ「なあ!なあなあなあ!俺は!コゼットちゃん!俺は!?」
ジャントール「かぼちゃの役ならいいぞ。」
ルチアーノ「なんでかぼちゃ!?」
コゼット「……、」
コゼット「あの子に、よろしくね。」
ジャントール「コゼット?」
コゼット「ううん!ね、パパ。スクウィークはお嫁さんいないの?」
ジャントール「そうだなあ……。コゼットはどんな子があいつのお嫁さんだと思う?」
コゼット「えーっとねえ……、」

ユウ「……、きっと、これでよかったんだよな?」
ユウ「……。」
ユウ「さて、行くか、メルク。」
「はいなのですよ~!それにしても今回は、地味な活躍だったのですよ。」
「地味って!……でも、確かに最近影が薄い気がする……。」
「げ、元気だすのです!ユウさんもいつか正統派主人公みたいに活躍する日が来るかもしれないのですよ。」
「そうかな……、」
「そうなのですよ……、……ら、……して……、……。」
「……、……。」

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