第3話:ミスター・シトルイユ

コゼット「ここはどこなの?」
?(シトルイユ)「夢の町さ。」
コゼット「夢?何の夢?」
?(シトルイユ)「それは君が決めることさ。もしくは、僕が決めることでもある。」
コゼット「……よくわからない。あなたは誰なの?」
?(シトルイユ)「誰……、つまりフゥアァユゥということだね?なるほど、それは難しい質問だ。」
コゼット「どうして?」
?(シトルイユ)「どうしてって、それじゃあお嬢さん。君は自分がなんなのかはっきりわかってるっていうのかい?」
コゼット「……?わたしの名前はコゼットだよ。」
?(シトルイユ)「違う違う。私が知りたいのは、君が何なのかってことさ。」
コゼット「わたしはただのコゼットだもの……。」
?(シトルイユ)「ただのコゼット……!じゃあコゼットってなんだい。」
コゼット「……コゼットは、コゼットだよ。」
?(シトルイユ)「らちが明かないな。君はコゼットという名前の何なんだい?」
コゼット「……わたしは、人間で、レーヴの村に住む……、パパの……、」
コゼット「パパの……、」
?(シトルイユ)「パパの?」
コゼット「……わたし、パパのなんなのかな……。」
?(シトルイユ)「ふゥむ。ということは、やっぱり君も自分が誰だかわからないわけだね。」
コゼット「……あなたも自分のことがわからないの?」
?(シトルイユ)「そうとも。わからない、もしくは忘れてしまったとも言える。」
コゼット「忘れてしまうものなの?」
?(シトルイユ)「忘れてしまうものさ。なんせ、ここじゃあ一瞬は1日、1日は1年、1年は一瞬のことだからね。」
?(シトルイユ)「自分が何だったか忘れたって、そりゃあおかしかないさ。大事なのは今自分がどこにいるかだよ、お嬢さん。そしてどこに行きたいのか、さ。」
コゼット「どこに……、」
?(シトルイユ)「もしくは、何を求めているのか、とも言える。」
コゼット「……。」
?(シトルイユ)「お嬢さんにもあるはずさ、求めているものがね。ここに来たということはそういうことだよ。」
コゼット「……求めてるものはここで見つかるの?」
?(シトルイユ)「そうとも。なんたって、ここは夢の町だからね。君が望むものすべてが君のものになる。」
コゼット「……でも、ここはいろんなものがありすぎて、何が何だかわからないよ。」
?(シトルイユ)「それなら、小さなお嬢さん。私がこの町を案内してあげよう。」
コゼット「案内?」
?(シトルイユ)「そうさ、ここは小さな君には広すぎる。案内人が必要だ。」
?(シトルイユ)「任せてくれたまえ、女性のエスコートの仕方はちゃんと練習したことがある。そうあれは……、」
?(シトルイユ)「……あー、っと、ウウン。」
?(シトルイユ)「いつのことだったかはもう忘れてしまったけどね。」
コゼット「……。」
?(シトルイユ)「だ、大丈夫だとも!たとえかぼちゃ頭だって、やり方はちゃんと覚えているさ!」
?(シトルイユ)「まずは……、えーっと……、」
?(シトルイユ)「そう!お嬢さん、お手を拝借。」
コゼット「……その言い方はどうかと思う。」
?(シトルイユ)「ま、まあ、細かいことはすぐに忘れるさ!」
?(シトルイユ)「さあ、私の手をしっかり握っていてくれたまえよ!いち、にの、さんだ!」
コゼット「えっ……?」
コゼット「ふ、ふわああああっ!?あ、あの、う、浮いて……ッ!」
?(シトルイユ)「はっはっは!案内するって言っただろう?」
?(シトルイユ)「この広い世界を見るにはいくら時間があったって足りないさ!それなら少しばかり高いところからみてみないとね。」
コゼット「で、でも、落ちたら……!」
?(シトルイユ)「お嬢さん、君はなかなか頭の固い女の子だ。ここは夢の町なんだよ?」
?(シトルイユ)「君が望めば空を歩くことだって、星の道を作ることだって、なんだってできる。」
?(シトルイユ)「だれだって1度は考えたことがあるはずさ!自分の中にある空想の世界を!」
コゼット「……、」
?(シトルイユ)「おっと、いけない!私としたことがまだ私の名前を教えていなかった!」
?(シトルイユ)「私はシトルイユ。ミスター、もしくはミスター・シトルイユと呼んでくれたまえ!」

ジャントール「ここが呪われた城……、コゼット……、どこにいるんだ……。」
ジャントール「……、物音……。」
「チュウ!」
ジャントール「……、ネズミか……、」
「なーんてな!」
ジャントール「……!いったいどこから……、」
「ここだよ、ここ!まったく、お前はそんなことも忘れちまったのか?」
ジャントール「ここ……?」
「そうそう、こっちだ!お前の足元!」
ジャントール「……お前、は……、」
「おいおい、まさかオレの顔を忘れたって言うんじゃあないだろうな?オレは世界で1番イケてるネズミ、その名も……、」
ジャントール「スクウィーク……。」
「その通り!」
スクウィーク「よう、相棒!久しぶりに会えたってのに、随分シケたツラしてんな!」

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