第3話:2人のショコラティエ

ジネット「癒術士ってホントにすごいんだね。ユウくんがいるだけで、いつもの数倍はやりやすいよ。」
ユウ「オレいらなかったような気もするけど……。」
メルク「みゅ?モンスターたちがどこかに向かい始めたのですよ。」
ジネット「きっとチョコレートの在処だ。ボクたちも追いかけよう!」

ユウ「モンスターが止まったな……。ということは、ここが目的地ってことなのか?」
ジネット「そうみたいだ。」
ジネット「ほら、見て。ここの石や、木のチョコレート……、すごくなめらかだ。特Aランクは確実だよ。」
メルク「それはチョコレートのランクなのです?」
ジネット「チョコレートだけじゃなくて、ほかのお菓子にも使われるけどね。」
ジネット「特Aランクなんてチョコレートはボクの父さんでもなかなか手に入らないんだよ。やっぱりチョコレート・ワールドはすごいな……。」
メルク「そんなにすごいチョコレートだったのですね……。」
メルク「そうと分かればさっそくチョコレートをゲットするのですよ!」
ジネット「あっ、ちょっと待って!」
メルク「みゅ?」
ジネット「こういうのは、ちゃんとやり方があるんだ。好き放題に採っちゃうと、質が落ちたり、その後もうチョコレートが出来なくなったりするからね。」
メルク「そ、そうだったのですよ……。」
ジネット「だからこそのスイーツハンターさ。そういう訳だから、ここはボクに任せて君たちはこのあたりを見ておいでよ。」
ジネット「王国の人たちには、こういった風景は珍しいって聞くしね。」
メルク「確かにお菓子初心者の私たちが手伝うには、荷が過ぎるかもですよ……。」
ユウ「じゃあ、悪いけど、頼むな。俺たちはその辺にいるから、もし手伝えることがあれば呼んでくれ。」
ジネット「ああ、それじゃ後で。」

ユウ「あれ、そういえばタルトレードさんはどこいったんだ?」
メルク「それならあそこに……。」
タルトレード「……、」
メルク「……、」
メルク「タルトレードさんも、なんだかんだいって本当にショコラティエをやめたいわけではないかもしれないのですよ……。」
ユウ「そうだな……。」
「わんっ!」
ユウ「なんだ?さっきのモンスターが鳴いて……、ん?」
メルク「あそこにいるモンスター、何かゴテゴテしてるのですよ。それに、何度も後ろを振り返っているような……。」
プルナー「わんわんっ!」
?(オペラティオ)「ここか……。……このなめらかさに、硬度……、特Aレベルだな。」
?(オペラティオ)「あたりだ。よくやったな、ルナ。」
ルナ「わんっ!?わんわんっ!」
?(オペラティオ)「……喜ぶと走り出さずにいられない癖は治せないのか。」
ルナ「わふっ?わふわふっ!わ……、」
ルナ「きゃいんっ!?」
?(オペラティオ)「……転んで付いたチョコレートは、城に戻るまでに落としておけよ。」
ルナ「わふ……。」
メルク「あの人もチョコレートを採りに来たのですよ?」
ユウ「そうみたいだな……。もしかして女王様にチョコレートを作ってるっていう……。」
ジネット「2人ともどうしたんだい?」
メルク「ジネットさん!どうやら私たちのほかにも、ここにチョコレートを採りに来た人がいたみたいなのですよ。」
ジネット「え?あ、ほんとだ。あの人だよね。」
ジネット「それに一緒にいるプルナーは、さっきの群れの子じゃないね。あの人のパートナーなのかな。それにしてもあのプルナー、すごくパートナーに懐いてるなあ。」
メルク「少々一方通行な愛な気もするのですよ……。」
ジネット「あれ、そういえばレド兄は?てっきり君たちと一緒にいるかと思ってたんだけど……。」
ジネット「タルトレードさんならそこに……、って、あれ?さっきまであそこにいたんだけど……、」
メルク「みゅっ!?ユウさん、タルトレードさんが……、」
タルトレード「このなめらかさ……、作るならトリュフか、それかガナッシュ……、いや、それより……、」
タルトレード「……って、オレはもうショコラティエじゃねえっつーの!あいつへの義理を果たしたら、さっさと就職斡旋所に行って転職するんだからな……。」
ルナ「わふぅ~!」
タルトレード「ウワッ!?」
ルナ「わふ?」
タルトレード「い、いきなり耳を舐めるな!?」
ルナ「わふん!」
タルトレード「なんだよ、やけに人懐っこい……、」
タルトレード「この飾り……、お前まさかあいつの……、」
オペラティオ「ルナ。」
ルナ「……!わん!」
タルトレード「お前……、」
オペラティオ「タルトレード、こんなところで会うとはな。」
タルトレード「オペラティオ……!」
オペラティオ「何をしに来た?まさかコンテストでオレに大敗を喫したお前が、陛下にチョコレートを作りに来たなどとは言わないだろうな?」
タルトレード「別に……。来たくて来たわけじゃない。」
オペラティオ「……ふん。」
オペラティオ「忠告しておく。女王陛下は大変気難しい方でいらっしゃる。」
オペラティオ「夢を見る前に言っておくが、あのお方を満足させるチョコレートを作るのは、お前には無理だ。」
オペラティオ「……不可解なことに、ゴルディン師はお前を高く買っているようだがな。」
タルトレード「……、」
タルトレード「……今度、師匠に会ったときに言っておいてくれ。オレはもうショコラティエをやめるってな。」
オペラティオ「……、」
オペラティオ「賢明な判断だ。ではな。俺は城に戻る。」
タルトレード「……。」
オペラティオ「……、1つ、返し忘れていた。受け取れ。」
タルトレード「何投げ……、」
ルナ「わふっ!」
タルトレード「えっ……?」
オペラティオ「……、ばかもの……。」
オペラティオ「お前と遊ぶために投げたんじゃない!お前がキャッチしてどうする、タルトレードに渡せ!」
ルナ「わふ……、」
オペラティオ「……、とにかく!」
オペラティオ「それはもうお前のものだろう。俺のところに紛れ込んでいた。」
オペラティオ「……もっとも、もう必要のないものだったかもしれないがな。」
タルトレード「……、」
オペラティオ「いくぞ、ルナ。」
ルナ「わんっ!わ……、」
ルナ「きゃうんっ!?」
オペラティオ「……同じところで躓(つまず)くじゃない。」
ルナ「わふ……。」
タルトレード「……、」
タルトレード「つーかこれ……、あのプルナーのヨダレでべっとべとなんだけど……。」
メルク、ユウ、ジネット「……、」

タイトルとURLをコピーしました