第5話:星の王子さま

フードリィドール「フューッ!」
メルク「みゅわわわわ!まだ追いかけてくるのですよおおおっ!ユウさん、もっと早く走るのですよ~!」
ユウ「もう全速力だよ!」
ユウ「ジネット、このまま逃げ続けるのは難しそうだ……!どうする!?」
ジネット「……!あそこの森に逃げ込もう!」
ジネット「あのモンスターは身体が綿あめのようになっているから、入り組んだ森には入ってこられないはずだよ!」
ユウ「わ、わかった!」
メルク「そうと決まったら、全速前進なのですよおおお!」
ジネット「って、あわわわわ!ストップ!ストップだよ!」
ユウ「へっ!?きゅ、急にはとまれなっ……、」
ユウ「うわあっ!」
ジネット「沼があ……、うわあっ!?」
タルトレード「うわああっ!?」
フードリィドール「フュ~……?」

「……。」
「……。」
「……。」
?(ホワイトミル)「ジネット、これあげる。」
ジネット「……チョコレート?」
ジネット「わ、ハートの形だ!」
ジネット「……って、あれ?ミル兄、もう1つ、同じのもってる。」
ミル(ホワイトミル)「もともとは1つのチョコレートだよ。ほら、ハートの下の部分がぴったり重なるだろ?」
ジネット「ほんとだ!」
ジネット「……でも、なんでわざわざくっつけて作ったの?1人で食べるにはちょっと大きいし、最初から1つにすればいいんじゃ……、」
ミル「そりゃ……、こうやって分けて食べるためなんじゃない?」
ジネット「ふーん?まあいいや。いただきまーす!」
ジネット「……わ、おいしい!こないだ父さんたちが買ってきた苦いやつより、すっごくおいしい!」
ミル「えー、あの苦いのがいいのに。ジネットは子供だなー。」
ジネット「む……、いいだろ。子供なんだから!」
ミル「そうだね。ジネットが好きなら、このチョコレートあげる。まだ割ってない残りがあるから。」
ジネット「こ、こんなおいしいチョコレートを……!?いいの!?」
ミル「うん。ボクは大人だから、あの苦いチョコレートの方が好きだった。」
ジネット「やったー!ありがとー!」
「ミルー!ジネット!晩菓子の時間だぞ!」
ジネット「はーい!」
ジネット「父さんが呼んでいる!ミル兄、いこ!」
ミル「うん。」
ミル「それにしても、さすがだなー。」
ジネット「ミル兄?」
ミル「いや、ジネットは子供だなー、って。」
ジネット「なんだよー!」

ジネット「へへへ、こないだミル兄からもらったチョコレート、すっごくおいしいなあ。」
ジネット「……でも、残り1個だけだし……、大事に食べよう……。」
ジネット「さて、今日はどこに遊びに行こっかな~!」
ジネット「そうだ!近所のレド兄のとこに遊びに行こうかなあ!」
ジネット「最近、よくミル兄が押しかけているみたいだし、帰りにチョコレートをお土産に持ってくること多いし……、」
ジネット「きっと町のチョコレート屋さんめぐりでもしてるのかも!そうと決まれば……、」
ジネット「ん?」
?(フランシール)「……、」
ジネット「……、」
?(フランシール)「……!」
?(フランシール)「あ、あなた、なにをじろじろ見ているの?わたくしにかまわないでちょうだ……、」
ジネット「その髪……、」
?(フランシール)「……、」
?(フランシール)「たとえ髪が白くてもわたくしはれっきとした……、」
ジネット「おひめさまみたいだ……。」
?(フランシール)「へ?」
ジネット「ね、君、どこからきたの!?この町の子?」
ジネット「あっ、ボクはねえ、1年前にここに引っ越してきたんだよ!ジネットっていうんだ、君は?」
フランシール「わ、わたくしは、フランシールよ。」
ジネット「フランシール?フランだね!」
フランシール「気安く呼ばないで!だいたい、わたくしにお姫さま、み、みたいだなんて、あなたは……、あなたは……、」
フランシール「う、うう~……!」
ジネット「えっ!?な、なんで泣くの!?ボク、なんか悪いこと言った?」
フランシール「うるさい!ばか!ばか!はやくどこかへいってしまってよ!」
ジネット「ええっ!?そんな、ボク、君を傷つけるつもりじゃ……。」
ジネット「ただ、その白い髪の毛がホワイトチョコレートみたいで、すっごく素敵だなって……。だからおひめさまみたいだなって……、」
フランシール「……、」
ジネット「……ごめんね。ボク、本当に君を泣かせるために、あんなことを言ったんじゃないんだ。」
ジネット「その……、これ、あげる。」
フランシール「これは?」
ジネット「ボクのとっておきのチョコレート。大事に食べるつもりだったけど……、君にあげる。」
フランシール「そ、そんな安そうなチョコレート……、」
ジネット「た、確かに安そうかもしれないけど……!でもすっごくおいしいんだよ!」
フランシール「……、いただくわ。」
フランシール「……、」
フランシール「おいしい!いつも城で食べているチョコレートより甘くておいしいわ!」
ジネット「だろ!?ミル兄は苦い方がおいしいって言ったけど、ボクはこっちの方が好きなんだ!」
フランシール「あっ、これ半分に割れるわ!ほら、あなたも半分食べなさい!」
ジネット「えっ?で、でもボクはもう食べたことがあるし、それに君にお詫びとしてあげたものだよ?」
フランシール「なっ!わたくしのチョコレートが食べれないというの!?」
ジネット「そういうわけじゃ……じゃ、じゃあ、いただきます。」
フランシール「どう?おいしいでしょう?」
ジネット「うん!」
ジネット「って、もともとはボクがあげたんだから、それは知ってるよ。」
フランシール「そ、そうだったわね。」
ジネット「でもやっぱり、おいしいや。ボク、このチョコレートが、今1番好きなんだ。」
フランシール「どこで買ったものなの?」
ジネット「え?うーん、それがボクもミル兄にもらったからわからないんだ。チョコレートも今のが最後だし……、」
フランシール「そうだったの?……なのに、どうしてわたくしにくれたの?大事なチョコレートだったのよね。」
ジネット「それは……、フランが泣いていたから。確かに、大事に食べようって思ってたけど……、」
ジネット「フランがそんなに喜んでくれたなら、ボクも嬉しいや。」
ジネット「それに、フランと一緒においしいを半分こできたからいいんだ。だから気にしないでよ。」
フランシール「……、」
フランシール「……決めたわ。」
ジネット「えっ?」
フランシール「わたくし、このチョコレートを探しに行くわ。あなたもついてきなさい。」
ジネット「ええっ!?」
フランシール「いいでしょう?わたくしは本当にお姫さまなんだから。そしてあなたは……、」
フランシール「そう、星の王子さまね。」

ジネット「あっ、フラン!もう来てたんだね!」
フランシール「遅すぎよ!ジネットのばか!わたくしをこんなに待たせるなんて、王子として失格だわ!」
ジネット「ええっ、ご、ごめんね?そんなに前から待ってたんだ!」
フランシール「……!」
フランシール「べ、べつにそういうわけじゃないけど……!ちょうど来たとこよ!」
ジネット「フランは照れ屋さんだなあ。楽しみにしてくれたんだよね?」
ジネット「ボクこそ、もっと早く来ればよかったよ。ボクもフランに早く会いたかったから。」
フランシール「……!あ、あなた、他の女の子にも同じようなこと言ってるんじゃないでしょうね!」
ジネット「えっ?フランだけだよ?」
フランシール「……、」
ジネット「フ、フラン……?」
フランシール「いいわ。信じてあげる。でも、誓って。」
ジネット「誓うって、何を?」
フランシール「大人になったら、わたくしと結婚するって。」
ジネット「えっ?」
フランシール「そっ、その顔はなんなの!?わた、わたくしと結婚はいやだというの……!?」
ジネット「いやっていうか……、そもそも女の子同士じゃ結婚できないんだよ。」
フランシール「……、」
フランシール「……、」
フランシール「……は?」

フランシール「ひどい!ひどすぎるわ!」
ジネット「ご、ごめんって。ボクが男みたいな格好してるから、勘違いしちゃったんだよね。」
フランシール「そうよ!女の子ならもっと女の子らしい格好をしたら!?そうしたら、わたくしのような哀れな犠牲者は……、うっうっ……。」
ジネット「フラン……、えっと、ごめんね……。」
フランシール「……、」
ジネット「ボクが本当に男の子だったらよかった……?」
フランシール「それは……、」
ジネット「その……、結婚はできないけど……、友達じゃだめ?」
ジネット「兄さんが言ってた。恋人よりも友達の方が長続きするって。」
ジネット「ボク、フランとこれからも一緒にいたいから、恋人よりも友達の方が嬉しいよ。」
フランシール「……、いいわよ。」
フランシール「そのかわり、2か月後のわたくしの誕生日会に、……と、友達として来てちょうだい。それで許してあげる。」
フランシール「それから、わたくしが困ったときはいつでも助けてよ。女の子でも、男の子でも、あなたはわたくしの王子さまなんだから!」
ジネット「フラン!わかった!絶対行く!」
ジネット「フランが喜びそうなプレゼントを持って、絶対行くから!」
フランシール「……う、嘘ついたらモグー1000匹食べさせるから!」

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