第9話:王子さまとお姫さま

フランシール「……、力が……、」
フランシール「いけない……!そろそろ日が昇ってしまう……!」
フランシール「早く、早く何とかしないと……、けど、もうどうしようにも……、」
フランシール「……!」
フランシール「どうして……、」
ジネット「……久しぶりだね。」
フランシール「……、」
フランシール「わたくしは女王よ。もう、お姫様ではない。」
ジネット「……そうだね。女王様なんだもんね。」
フランシール「そうよ。わたくしは、あなたがいなくても立つことができる。」
フランシール「だから、あなたは必要ないの。必要ないのよ。」
ジネット「……それでも、ボクは君を助けたいんだ。」
フランシール「……助ける?あなたが?わたくしを?」
フランシール「……、嘘つき。」
ジネット「……、」
フランシール「あなたは、嘘つきよ!」
フランシール「もう、どこかへ行ってしまって……!あなたなんかいらない!わたくしはもう、女王なんだから!」
ジネット「フラ……、」
ジネット「なっ!?」
フランシール「これは……、なんてこと。もう時間が……、」
ジネット「どういうこと?城が揺れてる……。」
ジネット「……!まさか君、力が……、女王の力が使えないのか……?」
フランシール「……、」
ジネット「チョコレートを輸出禁止にしたのも、ショコラティエにチョコレートを作らせていたのも、そういうことなのか……?」
ジネット「君が、チョコレートを愛せないから……!」
フランシール「……、」
フランシール「そうよ。」
フランシール「戴冠式の日にどんなにすばらしいチョコレートを食べても、ちっともおいしく感じられなかった……!」
フランシール「どんなに上質の材料を使って、どんな高名なショコラティエを雇っても、わたくしには味のないガムを噛んでいるようにしか思えない!」
ジネット「女王の資格は、チョコレートを愛すること……。それで君は、女王の力を失ったのか……。でも、それならどうして今までは……、」
フランシール「契約したのよ。」
ジネット「契約?」
フランシール「ティラミスタと。」
フランシール「戴冠式の夜、あるモンスターがわたくしの元に訪れたの。願い事を1つだけ叶えてやると。」
フランシール「女王の力を願ったけれど、その期限は1年後の誕生日まで。日が昇って明日になれば失ってしまう、偽物の女王の力……。」
ジネット「そんな……、」
ジネット「……!」
フランシール「逃げなさい。」
ジネット「フラン!?」
フランシール「もう、この城は持たないわ。」
ジネット「君はどうするんだよ!」
フランシール「……わたくしは、女王よ。この城から出ていくことはできない。だから、早く……、」
ジネット「……。」
ジネット「違うよ。」
フランシール「え……、」
ジネット「女王様の力はないんだ。君は……、君はもう、女王様じゃないよ。」
フランシール「それは……!」
ジネット「だから、ボクが助けてあげる。」
フランシール「……、」
ジネット「お姫様を助けるのは、王子さまの役目だろ?」
ジネット「遅れてゴメンね。」
ジネット「誕生日おめでとう、フラン。」

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