第3話:食べちゃいたい

?(マシマロ)「……。」
?(メレンゲ)「なあ、マシマロ。今日も綿あめの数を数えてんのか?」
マシマロ「うん。」
?(メレンゲ)「なんでだよ。」
マシマロ「知りたいから。」
?(メレンゲ)「……なんで知りたいんだよ。」
マシマロ「知りたいと思ったから。」
?(メレンゲ)「……。知ってどうすんだよ。」
マシマロ「知りたいだけ。」
?(メレンゲ)「……ふーん?わっかんねー……。」
マシマロ「……。」
?(メレンゲ)「ええと、こうか……?1,2,3……、」
?(メレンゲ)「眠くなってきた……。」
?(メレンゲ)「……あれ?あそこにいるのって、ターネス兄ちゃん?」

町人「おっ、ターネス、無事だったのか!聞いたぜ、うっかり例の森に入っちまったんだろ?」
ターネス「耳がはええなァ……。ありゃ、命がいくつあっても足りねーわ!」
町人「あら、ターネスさん!なにかいい材料はある?」
ターネス「悪ィが、今日の収穫はゼロだ。」
町人「ターネス、いい採取場の情報があるぜ!」
ターネス「後で聞きに行く!」
?(マーガレット)「……。」
ターネス「町が珍しいか。それとも人か?」
ターネス「いつもこのくらいの賑わいだ。行くぞ、はぐれるなよ。」
?(マーガレット)「はい、かみさま!」
ターネス「だから違うって言ってんだろうが……。」
町人「おい、ターネスが幼女を連れてるぞ!」
町人「ずっと独り身だと思ってたら、そういうことだったの!?」
町人「道理で、あたしになびいてくれないわけだよ!」
ターネス「違うってえの!これはワケあり!ほっとけ!」
ターネス「っと、ああ?あいつ、はぐれんなって言ったのに……、」
?(マーガレット)「かみさまー!」
ターネス「おい、大声で言うな!」
ターネス「……けど、悪かったな。身長も歩幅も違うもんなァ……。」
ターネス「しょうがねえか。手ェ放すんじゃねえぞ。」
?(マーガレット)「……?」
ターネス「ああ?なにボサっとしてやがる。ほら、手ェだせ。」
?(マーガレット)「……?」
ターネス「よし、行くぞ。ちゃんと手ェ、握ってろよ。」
?(マーガレット)「……。」
ターネス「だからって、手ェばっか見てねえでいいんだよ。前見て歩かねえと、ぶつかるぞ。」
?(マーガレット)「わかった!」
ターネス「ここはゼラチンの町だ。あの森のすぐ近くの町だから、お前のことも何かわかるかもしれねえし、それに……、」
ターネス「……まあ、先に飯を食わせてやるよ。とはいえ、金が……、」
町人(ガトー)「ターネス、戻ってきていたのか。」
町人(ハロハロ)「はろーはろー。」
ターネス「ガトー、それにハロハロも。」

?(マーガレット)「はぐはぐはぐはぐっ!」
ハロハロ「きょうもたのしくおかしはおいしい。おかわりはおかわるー。」
ターネス「悪ィな、ハロハロ。そいつを任せちまって。」
ターネス「にしても、まだ食うのか……。いったいどうなってんだ?お前の腹はよ……。」
ガトー「ふん、いい食べっぷりだな。ターネス、お前は食べないのか。」
ターネス「こいつ見てるだけで、腹いっぱいだっつーの。それより、ガトー。いいのかよ、おごってもらっちまって。」
ガトー「以前、お前には上質の武器素材を手に入れてきてもらったからな。その礼だ。」
ターネス「あの分の代金はもうもらったはずだぜ。」
ガトー「そう気にするな。得意先へのサービスとでも思っておけ。これからもうちの武器と仕入れをよろしく頼む。」
ターネス「……そうかよ。そういうことなら、ありがたくタダ飯を食わせてもらうとするさ。」
ターネス「だがな、前にも言ったが、俺はひとつの町にずっと留まるつもりはない。」
ターネス「……そう言っときながら、この町には何度も来ちまってるけどなァ……。」
ガトー「知っている。だから、お前がこの町に来た時にでも寄ってくれればいい。お前の仕入れる素材の質は、信頼している。」
ターネス「あんた、無愛想に見えてそういうところは恥ずかし気もなく言うよなァ……。」
ガトー「師の教えでもあるし……、それに、お前にはそうしないと伝わらないだろう。」
ターネス「はあ?」
ターネス「……まあ、なんにせよ。俺みたいな弱小スイーツハンターをそこまで買ってくれるとは、ありがたーい話だけどな。」
ガトー「それにしても、町から町へと身ひとつで飛び回るお前が連れを連れてくるとは驚いた。」
ターネス「別に好きで連れてきたわけじゃねえよ。」
ターネス「こいつがどういうわけだか、あの森にいて、そいで、モンスターに襲われそうになったから、ついでに一緒に逃げてきたってだけだ。」
ガトー「親は?」
ターネス「道中で聞いてみたが、知らねえとよ。あの森に住んでるみてえなことを言ってたが……、」
ガトー「あの森には人間の食べられるものはないはずだ。」
ターネス「そうなんだよな。だから結局、こいつが何者なのかわからずじまいだ。」
ターネス「腹が減ってるみたいだったから、とりあえずなんか食わせてやろうかと思って、町まで連れてきたものの……、これからどうすっかね。」
ガトー「お前が面倒を見る気はないのか?」
ターネス「俺がァ?ムリムリ、責任事を抱えるのはいやだね。俺はそういうのが嫌いで、こんな暮らしをしてんだからよ。」
ガトー「だが、拾ってきたのはお前だろう。」
ターネス「そりゃ……、そうだけどな。」
ターネス「……、それによ、俺が世話するよりこの町の施設で暮らしたほうが、こいつも幸せじゃねえのか?」
ガトー「それは、お前が決めることではないな。」
ターネス「だがその方が、こいつだけじゃなくて、オレも幸せになる。」
?(マーガレット)「むぐ……?」
ターネス「って、まだ食ってたのかよ。腹、ぱんぱんじゃねえか。」
?(マーガレット)「もうはいらない!」
ターネス「だろうな……。」
ターネス「っと、まあいい。腹いっぱいになったなら、行くぞ。」
?(マーガレット)「……?」
ターネス「いいか。今からお前の引き取り先を探しに行くんだよ。」
?(マーガレット)「……?」
ターネス「こりゃ、わかってねえな……。」
?(マーガレット)「かみさまー!」
ターネス「ちょっ、おい!」
ガトー「神さま?」
ターネス「……、どういうわけか、俺のことをそう呼ぶんだよ。」
?(マーガレット)「かみさま、たべもの!なみだのあめ……、」
ターネス「ああっ!?」
ターネス「おい、ちょっとこっち来い!」
?(マーガレット)「はーい!」
ターネス「ったく、返事だけは元気にしやがって……。いいか、森でのことは内緒だぞ。」
?(マーガレット)「……?」
ターネス「俺の涙が飴になったことだ。絶対に誰にも言うんじゃねえぞ?」
?(マーガレット)「はい、かみさま!」
ターネス「だから、俺は神さまじゃねえって何度言えば……、」
ガトー「……食べ物をくれたから神さまとは、神話のようだな。」
ターネス「……、」
ターネス「あ、ああ。そうだな……。」
ガトー「随分、お前に懐いてるようだ。」
ターネス「懐く?んなわけあるかよ、餌付けされただけだろ。お菓子をくれるなら、誰にだってついて行くさ。」
ターネス「ほら、お前がさっきまで食ってたお菓子をくれたのは、この武器屋のおじさんだぞ。」
?(マーガレット)「……?」
ターネス「……?」
ターネス「じゃなくてだなァ……。お前の理論で行くと、ガトーも神さまだろ?」
?(マーガレット)「かみさま!」
ターネス「うぐっ!」
ターネス「いってえ……、いきなり飛びつくなよ。」
ガトー「ふん、神さまはお前だけのようだぞ。」
ターネス「……んなこと、言ったってなァ。」
?(マーガレット)「あむあむ。」
ターネス「ヒッ!」
ターネス「ちょっ、バカ!なに人の首、くわえてんだ!食いものじゃねえぞ!?」
?(マーガレット)「あぐ……。」
ターネス「うげ……、べとべとじゃねえか。ったく、なんなんだよこいつは……。」
ガトー「お前と離れたくないんだろう。」
?(マーガレット)「かみさま、いっしょー。」
ターネス「……、」
ガトー「引き取ってもらったところで、お前のところまで脱走してきそうだな。こういう相手は、なまじっかなことじゃ突き放せないぞ。」
ターネス「はん、経験談かよ?」
ガトー「……否定はしない。」
ハロハロ「……?」
ガトー「……とはいえ、こちらでも引き取り手と身元は調べておく。それが分かるまでの間ならどうだ。」
ターネス「……、」
ターネス「わかったよ。……名前、考えねえとなァ。」
?(マーガレット)「かみさまー!」
ターネス「お前にとっての俺の名前は、神さま、なわけか……。」
ガトー「……、」
ターネス「ああ、そうだ。あの森……、久々に来たが前よりも広がったみてえだな。……、やばいのか?」
ガトー「……。」
ガトー「さてな、あの森に関しては予想がつかん。森の拡大の原因も食い止め方も分からないことだしな。」
ターネス「やっぱそうか……。」
ガトー「だが、いずれこの町を捨てることになるなら、それでいいと思っている。先月の町会で、皆が決めたことだ。」
ターネス「なっ……。」
ターネス「……マジでそれでいいのかよ。町捨てるってえのは、シャレになんねえことだぜ。」
ガトー「かまわん。俺たちにとってはそういう価値観ということだ。」
ターネス「……そうかい。……ま、根無し草の俺には関係ねえことだな。」
ガトー「ああ、そのとおりだ。」

ゲルトルート「うん、そろそろ休憩にしよう。みんな、ご苦労。」
ユウ「うう……、」
ティーガー「ユウ、またヘバってんのか。」
ユウ「いや、これでも3ヶ月前よりは随分マシになったと思いません!?この森の歩き方もわかってきたし……。」
メルク「確かに、初めの頃はティーガーさんに負ぶってもらうこともしばしばだったのですよ。」
ユウ「うっ。その節は、ご迷惑を……。」
ティーガー「いいってことよ。お前のおかげで、前よりもずっと早く調査が進んでるのは確かだしな。」
ユウ「ならよかったです。」
ティーガー「相変わらず、真面目くんだねえ~。」
ユウ「ティーガーさんって、よくそう言いますけど、俺、そんなに真面目に見えます?」
ティーガー「真面目っつーか、なんというか……、この3ヶ月でお前の旅の話やらいろいろ聞いたけど、癒術士だからってよくそこまで背負いこむなとおもってさあ。」
ユウ「ええ……?別に俺は……、」
ティーガー「へいへい、わかってるって。やりたいからやってるんだろ?」
ティーガー「まあ……、真面目ってわけじゃ、ねえかもなあ。それよりもっと……、」
ユウ「ティーガーさん?」
ティーガー「はあ~、俺は心配だぜ。お前がそんなでこれからやっていけるのか。」
ティーガー「って、わけでこれをやろう。」
ユウ「これって……、お菓子ですか?」
ティーガー「そうそう。これひとつで高カロリー、腹持ちも最高。こういう調査の時には重宝するぜ?」
ユウ「もしかして、最近、夜な夜なごそごそしてたのってこれ作ってたんですか?」
ティーガー「ま、そんなとこだ。こいつは、俺の実家に伝わる秘密のレシピだからよ。どこの店に行っても食えねえから、ありがたーく食えよー?」
ユウ「えっ、あ、ありがとうございます。じゃあ、いただきま……、」
ユウ「うまっ!?」
ティーガー「おっ、気にいったみたいだな。それなら、追加で大サービスだ!」
ユウ「わっ、こんなに食べ切れないですよ!」
ティーガー「まあ、いつ何があるかわからねえんだ。持っとけ持っとけ。」
ティーガー「俺は気に入ったやつには、このお菓子をプレゼントすることに決めてんだ。」
ユウ「は、はあ……、ありがとうございます。」
メルク「それにしても、調査をはじめて早3ヶ月。癒しては調査し、癒しては調査し、ようやく森の半分くらいまできたものの……、」
ユウ「有力なことってわかってないよなあ。せいぜい、不思議な穴があちこちにあいてるくらいで……、」
ティーガー「そうでもないぜ?」
ポネット「ぽねね~!」
メルク「みゅ、伝書モンスターなのですよ?」
ティーガー「おっと、頼んでたものが来たか。」
メルク「何が書いてあるのですよ?」
ティーガー「その穴なんだけどよ。外にいる研究者たちに、その穴の位置と、森の浸食度の記録を照らし合わせてもらってたんだよ。」
ゲルトルート「ティーガーは研究者たちに顔が聞くからね。それで、どうだったんだい?」
ティーガー「まだ具体的なことはわかりませんが、ビンゴですね。それぞれの穴の位置が、侵食の起点になってるようです。穴を中心として、異形化の度合いがひどくなっていると。」
ティーガー「それから……、こいつは驚いたな。この3ヶ月、侵食はさっぱり止まっているそうです。」
ゲルトルート「なに?それは喜ばしいことだが……、」
ゲルトルート「問題は、どうしてそうなったのか、ということだね。我々が森に入ったからなのか、それとも同時期に何か別のことが起きたのか……。」
ゲルトルート「……!ティーガー!」
ティーガー「はいよ!ユウ、メルク、下がってろよ?モンスターだ!」
ユウ「は、はい!」
ホイッパー「クエエエ……!」

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