第5話:賑やかな日々

ターネス「弁当はこんなもんでいいか……、マーガレット、そろそろ食い終わったか!」
マーガレット「んうー。」
ターネス「おい、食いながら寝るなっつってんだろ。」
ターネス「つーか、また寝癖が……。ったく、じっとしてろよ。服も着せてやるから。」
マーガレット「んー。」
ターネス「いいか?今はオレがしてやってっけどな、いつかは自分でできるようになれよ。」
ターネス「……これでよし、と。んじゃ、次は後ろ向け。」
ターネス「こんなぼさぼさの髪で、メレンゲたちと遊ばせたら俺の監督責任が問われんだよ。」
マーガレット「あむ……。」
ターネス「おい、人の指をしゃぶるな!代わりにグミでも食ってろ。」
マーガレット「むー……。」
ターネス「ったく、なんで俺だけそうもヨダレだらけにしたがんだよ……。」
ターネス「にしても……、……お前の髪の毛、相変わらずよくわかんねえ材質だな。その上、たまに動くしよ。」
ターネス「……、お前は、いったい何なんだろうな。3ヶ月も経つってえのに、身元もさっぱりわかんねえし。」
「マーガレットー!遊びに行くぞー!」
ターネス「チッ、もうメレンゲが来る時間か。髪の毛はこんなもんでいいか。ほら、動きやすくなっただろ。」
マーガレット「これすきー!」
ターネス「そいつはよかったな。んじゃ、俺は仕事に行ってくっから、メレンゲたちといい子で遊んでろよ。」
ターネス「今日の昼菓子はガトーに頼んであるから、遠慮せずに食え。」
マーガレット「はい、かみさま!」
ターネス「って、おい!いい返事をしながら、首にかじりつくな!さっき、散々食っただろうが!」
マーガレット「あむあむ……。」
ターネス「は・な・れ・ろ。まだ腹が減ってるなら、グミやるから。」
マーガレット「あい。」
ターネス「はー、今日はグミと甘噛みで満足してくれて助かったぜ……。それじゃあ、夕方には帰ってくるから。」

ターネス「さてと、仕事仕事……、」
ターネス「えーと……、今日の昼菓子はガトーに頼んでるからいいとして、晩菓子もまだ材料は残っていたはず……、」
町人「あら、ターネスさん!これからお仕事?」
ターネス「ああ、近場で良質の材料が採れるらしくてな。その狩りの手伝いを頼まれてんだ。」
町人「じゃあ、今日もマーガレットちゃんはメレンゲくんたちのところなのね。手が空いた時にでも、様子を見といてあげるわ!」
ターネス「悪ィな、助かる。今度、何か礼に持って行くからよ。」
町人「おっ、ターネス。どうなることかと思ったら、ちゃんと父親やってんなあ!」
ターネス「ああ!?一時的な保護者だっつっただろうがよ!」
町人「その割には、服だってちゃんと用意してやってんじゃねーか。」
ターネス「んなの、あんな適当な服でいつまでもいさせるわけにもいかねえだろ。」
町人「ま、そういうことにしといてやるよ!ガトーによろしくな!」
ターネス「あっ、ターネス!そういえば、今度、ママ友の集会があって……、」
町人「せめてパパ友で頼むわ……。」

メレンゲ「マーガレット、今日は何する?」
メレンゲ「……って、お前はいつも食うか寝るかごろごろするかだよな。」
マーガレット「……?」
メレンゲ「ほんと、赤ちゃんみたいなやつだな、お前は。」
メレンゲ「……っと、ここだ。」
マシマロ「……。」
メレンゲ「マシマロ。今日も、綿あめの数を数えてんのか?」
マシマロ「今日は、空飛ぶモンスターの数を数えてる。」
メレンゲ「なんでだ?」
マシマロ「知りたいから。」
メレンゲ「相変わらずわっかんねえー……。」
マシマロ「……、それなのに、どうしてわたしと一緒に空を眺めてるの?」
メレンゲ「えっ!」
マシマロ「メレンゲにはマーガレットもいるのに、どうしてわたしのところに毎日来るの?」
メレンゲ「そ、それは……、知りたいからだよ。」
マシマロ「何を?」
メレンゲ「おっ、お前のことに決まってんだろ!」
メレンゲ「……!い、いや、今のはその……、」
マシマロ「どうして知りたいの?」
メレンゲ「え、えっと……、」
マシマロ「知りたいから知りたいだけ?」
メレンゲ「お前と……、友だちになってみたいって思ったから。お前のこと、もっと知りたいんだ。」
マシマロ「友だちってことは、わたしのこと、好きなの?好きだから知りたいの?」
メレンゲ「……はあっ!?い、言わせんな!」
メレンゲ「ていうか、なんで今日はそんなに聞いてくるんだよ!いつもはおれとマーガレットが横に座っていてもお構いなしで空を見てるのに!」
マシマロ「知りたくなってきたから、メレンゲのこと。」
メレンゲ「そ、それって……、」
マーガレット「おなかすいたー。」
メレンゲ「ふおおおおっ!」
メレンゲ「って、もうかよ!」
マーガレット「おなかすいたー!」
メレンゲ「わかってるって。すぐ用意してやるよ、タ-ネス兄ちゃんからちゃんとお菓子を預かってるからな。」
マーガレット「おかしー!」
メレンゲ「にしても、あのターネス兄ちゃんがあんなふうになるなんてなあ。前までは、1匹プルナーって感じだったのに。」
メレンゲ「お前がいるから、だよな……。」
マーガレット「……?おかしー!」
メレンゲ「はいはい。ったく、お前はもうちょっと兄ちゃんに感謝しろよ。こんなにお菓子を用意するのも大変なんだぞ。」
メレンゲ「まあ、兄ちゃんはそんなの求めてねーのかもしれねーけど。」
マーガレット「かみさま?」
メレンゲ「それに、その神さまってなんだよ。兄ちゃんが何度も名前を教えてるのに、全然直そうとしないし。」
メレンゲ「せめて、神さまじゃなくて、パパとか父ちゃんとか呼べばいいのに。」
マーガレット「かみさまー!」
メレンゲ「……はあ、もうわかったよ。お前には言うだけ無駄っていうか、まだそういうのがわかんねーのかもな。」
メレンゲ「赤ちゃんなら、それが当たり前だよなあ。」
マーガレット「……?」
メレンゲ「ちょっとほっといて悪かったよ。お菓子食ったら、また綿あめの形あてでもして遊ぼうぜ。」
マーガレット「うん!」

ターネス「マーガレット、そろそろ風呂はいるぞ。」
マーガレット「きゃーっ!」
ターネス「オイコラ、逃げんな。」
マーガレット「きゃはははは!」
ターネス「ここから先は行き止まりでーす。」
マーガレット「きゃー!」
ターネス「はい、回収っと。」
ターネス「ったくお前、またメレンゲたちと外で寝転んでたな。髪に砂糖屑がついてやがる。これなかなかとれねーんだぞ……。」
マーガレット「うん!へへへー、ぎゅー、すきー!」
ターネス「へいへい、そりゃよかったな。」
マーガレット「もっと、ぎゅー!」
ターネス「はいはい。」
ターネス「……、お前には悪ィが、そろそろこの町を出ねーとな。長居しすぎた。」
マーガレット「……。」
ターネス「嫌か?ま、そりゃそうだよな。せっかく仲良くなったやつらが……、」
マーガレット「ふんふん!」
ターネス「って、なんだよ。首元で匂いを嗅ぐな。」
マーガレット「かみさまー、おなかすいた。」
ターネス「はあ?さっき腹ぱんぱんになるほど、晩菓子食っただろ。腹こわすといけねえから、ちょっとは我慢してろ。」
マーガレット「がぶっ!」
ターネス「いっだだだだ!」
マーガレット「あむあむ……。」
ターネス「いってえんだよ、バカ!また勝手に人の涙、食いやがって!」
マーガレット「おいしい!」
ターネス「俺はイテーっつってんだろ。」
ターネス「チッ、噛んだら飴が出てくるって覚えたな……。イテーし、疲れるし、この癖なんとかしねえと……。」
マーガレット「ふふんふ~。」
ターネス「ったく、腹いっぱいでご機嫌そうだな、お前は。つーか、あんなに食っても腹いっぱいにならないのに、俺の涙を食ったら大人しくなるってどういうことだよ。」
ターネス「その上……、前から大食いだとは思ってたが、少しずつ食う量が増えている気がするしよ。」
ターネス「……、お前がそうなっちまったのって、やっぱり俺のせいなのかね……。」
マーガレット「……?」
ターネス「お前の髪は初めからそうだったけどよ、お前が大食いになったのは、もしかしたら俺の涙を食っちまったから、なのかもしれねえな。」
ターネス「そうだとしたら……、」
ターネス「やっぱ俺が責任、取らなきゃいけねえんだよなァー……。」
マーガレット「かみさま?」
ターネス「……けど、悪ィな。やっぱ神さまにはなってやれねえよ、俺は。」
ガトー「ターネス!」
ターネス「ガトー?どうした、こんな時間に……、」
ガトー「話をしている暇はない。マーガレットを連れてすぐに身を隠せ。」

ターネス「マーガレット、しっかり捕まってろよ!」
マーガレット「はい、かみさま!」
ターネス「ったく、ほんとにお前は何者なんだか。お前を探してるやつらがいるんだってよ。ガトーが事情を聞きだしてくれるとは言ってたが……、」
「その事情、今ここで説明してやるよ。」
ターネス「お前、は……、」
ティーガー「よう。久しぶりだな、ターネス。」

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